神田は絶対、“好き”とか言わない。ましてや“愛してる”なんてもってのほか。……そりゃ、神田が言ったら可笑しいとは思うけど(ついでに夏でも明日雪が降るとか思うけど)、たまには私にだって言って欲しいときがあるんです。


「神田はさぁ……私のことどう思ってる?」


神田の顔を覗き込みながら言えば、彼は不可思議そうな表情で私を見た。


「……なんだよ、いきなり」
「べっつにいー!で、どう思ってる?」


これで言ってくれるほど素直だとは思ってないけれど、今日は言葉が欲しかった。
時には、本当に神田って私のこと好きなんだろうか?なんて考えてしまう。そして、考えた後はとてつもなく寂しくなるのだ。自分で言うのもなんだけど乙女心って複雑です。
少しの沈黙。神田は私の真意を見抜くように私を見る。


「……別に。嫌いじゃねぇ」


間をおかれて言われた言葉に目を丸くすれば、神田は不機嫌そうに「なんだよ」と返してきた。
“嫌いじゃない”なんて私の望んでいた“好き”や“愛してる”じゃないのに。どうして、こんなに嬉しいんだろう。心が暖かい。
でもやっぱり、ちゃんとした言葉で言って欲しかったな、と高望み。あれだけでも神田にしたらちゃんと言ってくれたほうなのに(いつもは神田がキレて終わる)、もっと頂戴と思っている自分が居ることに苦笑。
覗き込んでいた顔を元に戻して神田の体に寄り、「言ってくれてアリガト」そう早口に言って目を伏せた。

やっぱ、私から言うしかないのか……


「私は、神田のことが好きだよ」


神田の顔が赤くなって怒り出すのは10秒後の話。

「きみがすきだよ」


君が言ってくれないのなら、私が何度でも