小さい頃から、馬鹿にされてきた君だから、誰よりも君の幸せを願う。



私と撥春は小さい頃からの付き合い。
もちろん、春が物の怪つきだっていうことも知ってる。そのせいで、昔から馬鹿にされていたことも。
ずっと、春がブラックになるたびに胸が苦しかった。
なんで、なんで春はこんなに馬鹿にされるの?って。何もしてないのに、どうして丑が馬鹿だといわれるの?


「春、幸せになってね」


ポツリと今ここに居ないであろう彼に向けて呟いた。

幸せになってほしい、誰よりも。
君の前じゃこんなこと言えないから、風に運んでもらおう。

目を瞑ってそよ風を感じる。この気持ちが少しでも春に届けば良い。


「……俺の幸せは誰かさんが居ないと叶わないんだけど」


後ろから聞えてきた春の声。なぜか切なくて嬉しくて涙が出た。
泣き顔なんて見られたくなくて振り向けずに居れば、春は私の真正面にまで来てくれて「泣いてる?」と問いかけた。「泣いてない」そう言って首を振る。春は何も言わずに優しく笑って私の頭を撫でた。

抱きつくことは出来ないけれど、触れてくれるだけで幸せなの。

優しい沈黙が訪れて私たちを包む。
沈黙を先に破ったのは春のほうだった。


「俺はにも幸せになってほしい」


その一言で私の胸は暖かくなった。どうしよう、1度止まった涙がまた出てきそうだ。


「ありがとう、春……」


下を向いたまま小さな声で言うと、春がまた微笑む気配がした。


どうか君に届きますよう



君が幸せでありますように、と精一杯願うよ