もっと、もっともがいて?


求めるものの違い



「慊人、来たわよ」



がスッと襖を開けて言うと慊人は不機嫌そうにを見た。



「・・・、遅い」
「あらこれでも早く着いたほうなんだけど?」
「遅いんだよ!」
「ごめんなさい。ちょっと知り合いに会いに行っていたから」
「知り合いって本田 透?」
「よくわかったわね」



驚いたようにが言う。
慊人の怒りはますます増えたようでぐっと拳を握った。



「なんだよ皆、本田 透って!アイツの何が良いんだよ!ただの女じゃないか!!」
「そうかもしれないわね」
「だったらなんで!?なんで皆僕の傍から離れてくんだよ!何もかもあの女の所為だ!!」
「・・・慊人」
「紫呉も由希も・・・も皆嫌いだ!僕が居なくちゃ夾と変わらないのに!!」
「・・・慊人」
「出てけ!この部屋から出て行け!」



呼びかけても慊人は怒りを抑えられなかった。
「出てけ!」と何度もに向かって叫ぶ。
は少し困ったような顔をして立ち上がり、襖の方に向かった。





なんて大嫌いだ・・・」





襖を開けるとき慊人の呟くような小さな声が後ろから聴こえた。







「・・・私は好きよ?」



優しく寂しそうにが襖を開け出て行きながら言う。
慊人しか居なくなった部屋で慊人は体を丸めてうずくまった。









「・・・紫呉」



慊人の部屋から出てきたに待ち伏せしていたかの如く、紫呉が声をかけた。
ふぅと短く息を吐いては紫呉を見る。



「もっと優しくしてあげれば良いのに」
「その言葉を紫呉に言われるとは思わなかったわ。貴方こそ優しくしてあげなさいよ」
「あぁ、無理だよ。僕が望んでるものとあの子が望んでるものは違う」



お手上げのポーズで紫呉は苦笑した。
なぜか はとりの家を目指してと紫呉は歩く。





「それに僕は君の方が好きだしね。」





いきなりの告白にさすがのも眼を見開いて驚いた。
しかし、すぐに我を取り戻してはクスッと笑う。



「やだ、紫呉は慊人の事が好きなんだと思ってたけど?」
「僕はの方が好きだよ。」
「・・・慊人が怒るわ」
「大丈夫だよ。僕たちは信用されてるはずだから」
「私、貴方のそういうところ嫌い」



の髪に紫呉が優しく壊さないようにキスを落とす。
「手が早い」とは苦笑いを浮かべた。
ふと、視線を感じ建物の方を見ると慊人が窓からこっちを見ていた。
その事にが気がつき、窓の方を見るともうすでに慊人の姿は見当たらなかった。



「・・・、どうかした?」
「いや・・・もっともがけば良いのにって」







もっともがいて、私を楽しませてよ。
それでなきゃ貴女も私たちと同じなんだから。





口の端が自然と上に上がる。
にやり・・・、と効果音が似合いそうなの顔はドキッとするほど艶やかだった。

そんなを見て紫呉はもう1度を髪にキスをした。





まるで、彼女の言葉に賛成と言うように・・・―――――