毎日通いつめてくる彼。 「ー!!」 また来た…。 「…紅葉。」 「えへっ、また来ちゃった」 「あのさ…、何もないなら早く帰りなよ」 毎日、私のところに来る彼、草摩 紅葉。確か学年は一緒。紅葉は春と共にモテる軍団の1人。 なんで私のところに来るかなー…。最近、ちょっと嫌がらせかとも思ってる。 「用事ならあるもん!」 「…何?」 「一緒に帰ろ?」 今日もですか…。毎日、紅葉は放課後来て“一緒に帰ろ?”と訊いてくる。 今までただの1度も帰ったことないけど。だって女子の目が怖いんだもん!! はぁ、と溜息をついて紅葉をチラッと見ると、満面の笑みで私を見ていた。 「駄目。」 「なんで!?」 「なんでも」 「いっつもそれじゃん!」 「…。今日は日直なの」 今日、日直でよかった…。なんて思っていると、紅葉がうーんと唸りだした。私は紅葉と眼を合わさないように日誌を見る。数秒間、沈黙に包まれると突然 紅葉が声をあげた。 「じゃ、待ってる!」 「………は?嫌だよ」 「誰がなんと言おうと待ってるからね!」 「いやでも、遅くなるし…」 「遅くなってもいいもん!」 「つまんないよ?」 「と一緒に帰れるならいい!」 私の必死の抵抗にも紅葉の意志は変えられなかった。 こいつ、変なところで頑固だよな。 今の紅葉に何を言っても無駄だと悟って、黙々と日誌を書き始める。紅葉はそれがOKサインだとわかったらしく更にニコニコと笑って私の目の前の席に座った。 日誌を書き終えると男子がやるところの点検に行って…。窓は閉めてあるね…あとは 幸いなことに男子はすべてやって帰ってくれていて。私も帰ろうと鞄を持ち、日誌を持つ。そのときタイミングの悪いことに、ガラッと教室の扉が開いた。 「図書委員いるか?」 扉からひょこっと出てきた顔は私のクラスの担任、タケちゃんだった。 タケちゃんは教室の中をきょろきょろを見回して、図書委員が居ないことに気づく。そして、厄介な事に私と紅葉が居ることを見つけてしまった。 ヤバイ…気がする 「残ってんのはお前らだけか?」 「えぇ、そうみたいですね」 「そうかー。じゃ、書類の整理頼むわ」 「嫌だとは言わせてくれないんでしょう?」 「まぁ、そうだな」 「…わかりました」 書類は生徒会室にあると言われたので紅葉と一緒に生徒会室に向かう。歩いている途中に私から紅葉に話しかけた。 「紅葉、帰っていいよ」 「嫌だ!僕も手伝うよ!」 「はぁ…勝手にすれば?」 きっと紅葉に何を言っても無駄だ。 私が紅葉の方から眼を離すと、紅葉は「勝手にするもん!」と言って前を向く。 生徒会室は私たちが居た教室からあまり離れていなく、すぐに着いた。 ガラッと扉を開け、書類整理が面倒くさいことに気づく。 まさかこんなにあるとは…。 私たちの目の前に現れたのは書類の山。どうしてこんなになるまでほっといたのかというほどだ。 紅葉と私は一瞬言葉を失ってから静かに書類整理に向かった。 数十分が経ちあとこの一冊をもとの場所に戻せば終わる。 本を入れる場所が少し高いところにあって背伸びしながら本を入れようとして、入ったと思った瞬間に周りの本がバランスを崩し、私に向かって落ちてくる。 もう駄目当たる! 反射的に眼を強く閉じた。のに、なんの衝撃もない。恐る恐る眼を開くと目の前に紅葉の顔が。 「大丈夫?」 「え…あ。うん」 「よかった」と呟く紅葉の顔が凄く格好良く見えて顔が熱った。赤くなった顔を見られないように俯いて「ありがと」と言うと顔が見えないはずの紅葉が笑っているように思った。 どうしたってのよ、私!これじゃ私が紅葉のこと好きみたいじゃない!! 1人で混乱していると、急に紅葉がギュッと私のことを抱きしめた。 「、好き」 耳元で囁くと私と紅葉のお互いの顔が見えるまで顔を離す。顔が真っ赤になっている私はどこか逃げ道を探そうと眼を泳がせた。その途中、紅葉と眼が合ってしまって私はそこから動けなくなる。 紅葉の顔は真剣で今までとは全然違う感じ。怖いけれど、紅葉の瞳が私を捕らえて放さない。 「もみ「好き」」 最後まで言い終わらず、紅葉に2度目の告白をされ、しかも唇を奪われた。軽く触れるだけのキスはどこか甘くて。いったん離れて見つめ合って2度目のキスをした。 流されただけかもしれないけれど、そのとき凄く幸せだったんだ。 紅葉とのキスは凄く甘くて、紅葉らしいと思った。 意外な一面流されただけじゃないそう思いたい。 |