いつか二人で迎えられたら、と。

響くは鐘の音



「あ、結婚式……」


いつもの帰り道、教会の前で由希がポツリ呟いた。その呟きにそうだね、と頷いて華やかに彩られ幸せそうに微笑み歩く新郎新婦を見つめる。
彼と彼女の周りには花びらが舞い落ちて(フラワーシャワーっていうんだっけ?)、二人の家族や友人、親戚が祝福の声をあげていた。
教会からアーチへと続く赤い絨毯の上を歩く二人は本当に幸せそうで。
私たちは名も知らない彼らの始まりを祝福した。


「幸せそうだね」


視線を変えずに由希に話しかける。顔を見ていなかったから表情はわからなかったけれど、「うん」と頷いた。でもきっと微笑んでいたと思う。雰囲気と声が柔らかかったから。


「由希に似合いそう……ウェディングドレス」
「うん。……えぇ!?」


つられて頷いてしまった由希にクスクスと笑う。本当に由希は予想を裏切らない人だ。


「嘘」


綾女さんに言ったらやってくれそう。なんて思ったけれど言ったら由希が不機嫌になるのは丸わかりだったから言わないでおこう。彼のブリザードは結構くるものがあるのだ。
由希は真っ赤になりながら「が言うと冗談に聞こえない!」とかなんとか反論してきたけれど、ここもスルーの方向で。
反論を軽く聞き流して、また結婚式に目を向ける。どうやら、私たちがじゃれあっている間にブーケ投げは終わってしまったらしい。ブーケを手に持つ女性を見て、その幸せそうな顔に私も思わず微笑んだ。


「由希」
「……どうかした?」


ちらり、由希を見て彼の手を握る。


「二人であげられたら良いね、結婚式」


本当にそう思う。これはウエディングベル効果なんかじゃないと確信して言える。


「…っ、うん」


二人照れながら笑うと、風の悪戯か 結婚式に使われていた花が舞い終りてきた。
神様ってなかなか良い演出するなー。そんなことを思いながら、響く幸せの音を聞いた。