カリカリ。シャーペンを走らせる音が部屋の中に響く。今日はと2人で勉強会だ。(まあ、主に俺のためだけど)
こいつと2人っていうのはむしろ大歓迎なんだが、なんかこう……もうちょっと甘い雰囲気になってもいいんじゃねぇ?

「哉太」

の呼び声に顔を上げれば、ここ間違ってると指摘されて。残念な気持ちを抑えきれずに表情に出す。

「だって、わかんねぇ」
「わかんないって。この前習ったばっかじゃん」
「覚えてねぇ」
「哉太って相変わらず馬鹿だねー」
「うっせー」

頬杖をついてシャーペンをノートの上に投げ出せば、向かい側のがしょうがないなーなんて言いながら俺の方に身を乗り出した。
利き手にシャーペン、逆の手で教科書をなぞりながら、図なんかも取り入れて解説してるこいつはすでにカテキョモード。俺にもわかるように1から解説してくれるから、教師の素質はかなりあるんだと思う。
さらり、不意にの耳にかかっていた髪が零れ落ちた。その髪の毛を元の位置に戻す動作が自然で。目の前にいるこいつが女なんだと再認識する。

「……哉太?」

視線だけ上に上げられたの表情に、どきり、胸が鳴った。
聞いてる?投げかけられた問いにも曖昧に返事を返す。鼓動が速くてそれどころじゃない。

「……もしかして、見惚れてた、とか?」
「……っ」
「図星?」
「ちげっ」
「へーふーん」
「んだよ、その顔」
「別にー。私って愛されちゃってるんだなーって思っただけ」
「は!?」

ばか、そんなんじゃねーよ


私も哉太に見惚れることあるからおあいこだね、なんて言って笑うこいつに俺は撃沈した。