12月25日。前日はちょっとしたお祭り騒ぎになる日。ちなみに、私は25日のほうが好きだったりする。ケーキ安くなるし。 そんなこんなで、世間ではこの日をクリスマスと呼ぶんだけれども。そして、プレゼントをあげたり貰ったりするんだけれども。なぜに貰ってもいない人からプレゼントを要求されなくちゃいけないんだろうか。 「、プレゼント頂戴」 私の苦悩を知ってか知らずか、どこぞの王子は私にねだる。さっきからこの調子でずっと言い続けているのだ。 「なー、くれよ」 「なんでよ」 「欲しいから?」 あえてもう、語尾が疑問系なのはつっこまないことにする。ベルの行動なんていつも不可思議じゃないか。 溜息をひとつ零すと隣に居るベルが独特の笑い声をあげた。 「…何が欲しいの」 「」 冗談なのか本気なのかわからない発言にちらりとベルを見る。相変わらず口は弧を描いていて、ソファの背もたれにかけていた手をおもむろに私の方へと伸ばした。その手を軽くあしらい、ベルから視線を逸らす。 「なんで」 「欲しいから。俺、欲しいものはすべて手に入れたい主義なんだよねー」 「王子だから?」 「そ。王子だから」 王子って皆こんなに我侭なんだろうか。王子様ってもっと優しいものだと勘違いしていたようだ。なんだか悲しくなってきたぞ。私の王子像はこんなんじゃない。 再び溜息をつきそうになるも、その衝動を精一杯抑えて変わりに米神に手をあてた。 「なぁ、くれよ」 「違う人のものだって知ってるのに?」 「うししっ、そんなこと関係ねーし」 「私の立場としては困るんだけどなー」 「それも関係ねーから」 私には付き合ってる人がいる。…言い直そう。私には付き合ってる人がいた。その人物がベルじゃないってことは確か。ベルは私と彼の関係を知っている。そして今も続いていると思っているのだ。まぁ私が言ってないだけなんだけど。 恋人がいることを知っておきながらどうしてこんなことを言い出すのか。きっと本人に訊けば「王子だから」の一言で済まされてしまうんだろう。 目を閉じ米神をぐりぐり押さえながら、こんな事を考えていると体を軽く押されソファに倒れこんだ。驚いて素早く目を開ければ目の前にベル、首元に感じるのはヒヤリ冷たい物体。押し倒されたと理解したのは私にとっては遅い2秒後。 「人の女を襲いますか」 「だからさっき言ったじゃん。頂戴ってさ」 「私、許可してないんだけど」 「に拒否権なんてないし」 ししっと笑うベルを本気で殴りたくなった。ぶっちゃけてしまうと私は1日5回ぐらいベルを殴りたくなる。でも殴ったらきっと首元にあるナイフで刻まれてしまうから、また今度の機会にしようと思う。抵抗しても同じ結果になるような気がしてならないが。 まずは首にあるナイフをどうにかしてくれ。私の切実な願いなベルの気まぐれ心に通じたのかふとナイフの気配がなくなった。代わりにベルの顔が近づいてくる気がする。 ベルは耳元で囁いて、そのあとのリップ音が私の世界を支配する。ベルの髪の毛が顔にあたることもその上にのるティアラがちょっと顔にあたっていることも気にならない。 「俺のものになっちゃえよ、」 顔を上げたベルは私に悪魔の誘いを仕掛ける。私はできた人間じゃないから、悪魔の誘いは断れない。 「…ベル」 「黙ってろよ」 ギシリとソファが音をあげ、ベルの手が少し沈む。私の視界にはベルしかいない。唇にかかる息に体が震えた。 「最悪な女だね お前」 触れる瞬間、言われた言葉に私は口を弧に歪めた。 君色中毒ねぇ、知ってる?本当はずっと前から君しか考えられなくなっていたんだよ。 |