、と最愛の人が私の名前を甘く呼ぶ。本来ならば、ここでキスのひとつでもするべき場面なのだろうけれど、私にその術はない。 愛している人から愛されているなんて究極のシアワセなのに、泣き出してしまいそうだった。 拒否を表し軽く首を振る私の耳元でなおも甘く囁き続ける彼には戸惑いがまったく感じられない。私はこんなにも揺らいでいるというのに。 「好きだよ」 抱きしめられて紡がれた言葉に私の中の何かが壊れた音がして。気がつけば、腕は彼のことを突き飛ばして口からは言葉があふれ出ている。 「きらいきらいきらい!恭弥なんてきらい!」 声を張り上げて言うも彼は全然堪えていないようで、逆に突き飛ばした腕を拘束された。ぼやける視界で恭弥を睨みつける。泣き顔で睨みつけても迫力がないなんていうことは頭から抜け落ちてしまっていた。それほど余裕の表情を浮かべる彼を動揺させたかった。 恭弥はいつも自分は何ひとつ間違っていないって顔をして私を動揺させる。私はいつだって壊れそうなのに。 彼に抵抗するように嫌いの音量を上げていく。 本心とまったく逆のこと言っている自分は酷く滑稽で。嫌いが本心になってくれれば良いのにと思った。 「煩いよ。その辺にしないと咬み殺すよ?」 放たれた一言に咬みつく。 「良い…殺してよ!こんな世界なら死んだほうがマシだもの…!!」 どうやら殺して発言に苛立ったようで私の腕を掴む力が強くなった。二言目を言う前に首に噛みつかれる。揶揄ではなく本当に歯を立てられ、一瞬食われると思い体を強張らせた。けれど次にくるはずの痛みはなくて。 「…早く殺してよ」 「好きな人を殺すほど飢えてはいないからね」 「なんでそんなこと言うの…すきとか言っちゃいけない言葉でしょう」 「どうして?」 「だって!私と恭兄は兄妹じゃない!…好きになんて、なっちゃいけないのに!どうしてっ?」 「何回その質問をすれば気が済むんだい?」 半ば泣き叫ぶように言えば、彼は呆れたように息を吐いて言葉を繋げた。 「いつも言っているけど、兄妹なんて関係ない。」 恭弥の強い眼差しに射抜かれる。心臓までも咬み殺されそうな瞬間。 「僕は君が好き、それだけのことだよ」 禁忌思想怖いくらいにすきでどうしようもなくて |