この恋は叶いませんか?


「リョーマっ!」
「……また来たんスか」


呆れたように溜息をついてリョーマが私を見る。そんな冷めた視線に負けじとにっこり笑い返した。

リョーマは私の2つ下。
年下相手に何やってんだと思われるかもしれないけれど、本当にリョーマが好き。これ以上ないってほど。
だからこうやって毎日来てるんだけどね。


「……先輩、チャイム鳴ったスけど」
「えぇ!マジで!うう……じゃ、またね!」


ちくしょー!前の授業が移動だったからいけないんだよー!

先生の馬鹿ー!と先生を恨みながら、自分の教室に向かって走る。
息を切らして、あとこの階段を上がれば教室に着く、そんなところで声をかけられた。


「先輩っ!」
「……、ん?」
「あ、あの……」


後ろにいたのは可愛い女の子。目には涙が浮かんでいて、どこか怯えたような面持ちはずっとここで待っていたことを物語っている。(先輩の教室にくるのって結構怖いものだし)
「どうしたの?」そう声をかければ彼女はスカートを強く握って私を見た。


「リョーマくんをとらないでくださいっ!」


涙目で必死に訴える彼女に私は何も言えるはずなく。
リョーマ彼女居たんだ……なんて考える。
絶望に近いこの気持ち。泣きたいのはこっちの方だ。


「……何してんの?」
「…っ」
「リョーマくん」


こんな状況で逢いたくなかった。信じたくない真実を見せ付けられそうで。
そんな状況から逃げ出しくて、私は逃げ出した。
後ろで私の名前を呼ぶリョーマの声が聞えたけれど、今の私に振り向くことなんてできるわけなかった。ここに居たくない、それだけが私を突き動かしていた。


神サマ、この声が嗄れるほど、リョーマに“すき”と言ったら、この結末は変わっていましたか?
私の恋は叶いますか?

この運命が変わるなら、今すぐに世界中の人たちが聞えるくらいに叫んでしまいたかった。
涙が溢れる。叫んだからといって変わるわけないことぐらいわかってる。
滲んで見えづらくなった視界で私は走り続けた。


「ねえ、待って!」


声が聞えて腕を掴まれ振り向いたら、彼が居て。
このあとに続いた彼の言葉に私はまたまた涙することになる。


「俺が好きなのは先輩、アンタなんだけど」


……ああ、神サマ、ありがとうございます


声が嗄れるくらいに



私の心の声はどうやら神サマと彼に届いてくれたようで。