1週間。
1週間、俺がアイツと付き合いだしてから、まだそれだけしか経ってない。
それなのに、なんでアイツは冷静なんだ?


「…見つめないで。」
ー」
「何?」
「俺たち、もう少し進歩してもいいと思わねぇ?」
「別に」


チラッと俺のほうに眼を向けたかと思えば、呆れた顔をしてまた本に視線を戻す。俺は無意識に俯いた。

ちょっとぐらい俺のほう見て話してもいいじゃんか…。
なんか、好きなの俺だけみてぇ。


、俺のほう見て?」


可愛くねだってみた。やりたくねぇけど、が俺のほうを見てくれるならそれでいい。


「何、さっきから」
「…」


やっと見てくれたと思えばこの言葉。


「あ、寂しいの?」


そうかもしんねぇ。

こう言えたらどんなに良いだろう。でも俺はこんなことを素直に言えるはずもなく、ただ俯く。
頭の上のほうでがクスッと笑った。


「…しょうがないなー。寂しがりやの岳人くんにはこれをプレゼント」


が言って無理矢理 口に入れられたのは甘酸っぱいレモンキャンディ。そういえば誰かが初恋はレモン味だ。って言っていたのを聴いた事がある。本当なのかはわかんねぇけど。


「寂しがりやってなんだよ!クソクソ!」


顔が緩むのを必死に抑えながら言った。少し元気が出た…気がする。


「寂しがりやは寂しがりやよ。岳人にぴったりじゃん」
「俺は寂しくなんかねぇ!」
「ふーん。じゃさっきまで私にかまってもらえなくてふてくされてたのは誰?」
「…知らねーよ」
「知らないんだー。へぇー」


俺を見てくれるのは嬉しいけどこれってなんか違くねぇ?からかわれてるだけじゃん俺。


「ま、いいけど。どうせ、岳人のことだから“まだたったの1週間”って思ってたんでしょ?」

「…」
「ビンゴ。…ねぇ、岳人。“たった”って思うよりも“もう”って思ったほうが良いと思わない?」
「意味わかんねぇ」
「“たった”だと時間が長くてつまらないって感じがするけど、“もう”って思えば楽しすぎて時間が早く感じられたってことになるでしょ?」
「そうなのか?」
「そうなの。私は“もう”1週間って思ってるよ。岳人は違うの?」
「…わかんねぇ」


今まで“たった”と思ってきた自分が恥ずかしい。どうしては俺の悩みを1つずつ簡単に解いていってしまうんだろうか。

俯いてると「岳人はそれで良いと思うよ。自分で考えなくちゃ」とが言う。それから少しだけ静かになる。


「岳人、1週間記念しよっか」


唐突にが呟いた。意味がわからなくてパッと顔を上げると唇に何かが当たった感触。それがなんなのかを理解するのに数秒かかる。


「っ!?」


声にならない叫び声をあげるとが笑った。「奪っちゃったー」なんてほざいてる。


「…それは俺の仕事だろっ!?」
「え?」



が言い終わるか終わらないかぐらいに口を塞ぐ。

やっぱこういうのは男からじゃないとな!


「っ!?」


今度はが声にならない叫びをあげる番。俺はその顔を見て笑った。


これからは俺も“もう”って考えていけると良い。
もちろん、君の隣で。


まだたったこれだけの付き合い



“たった”より“もう”