2年ぶりに届いた招待状に目をとめたのはなんでだろう。 今までも同窓会の誘いは何度かあったけれど、すべて丁重にお断りしておいた。 中学はお世辞にもスバラシイとはいえなかったし(なんせ風紀委員長が学校を支配していた)仲の良い友人となら個人的に連絡を取り合っていたから。 だから今回も断りの電話を……不思議だ。電話をかけようとしていた私の体は知らないうちに同窓会用の服を選び始めていた。 同窓会当日。 会場には真新しいスーツを見に包んだ私が居た。ちなみにスーツは黒地に紺のストライプでシャツは白というシンプルなものでわりとお気に入りだ。 今日のために新しいものを買ってしまうなんてどうかしていると思う。どうしたんだ、私。 出席簿に名前を書いて会場内に入る。中にはちらほらと元クラスメイトの姿。 10年ぶりに見るクラスメイトは変わっていながらも昔の面影を残していて、なんだかタイムスリップでもしてしまった気分だ。 奇妙な気分でほけーっと佇めば、近くに居たクラスメイト(らしき人)に話しかけられた。 「あれ…、もしかして?」 「……え、あ。うん」 「うわー久しぶり!ってば全然顔出してくれないんだもんなー」 ………ごめんなさい。貴方誰ですか。 化粧が濃すぎるのか、この女性の顔にまったく見覚えがない。近くに居るだけで臭う香水の香りに顔をしかめたくなった。早くどこかに行ってほしい。 そうは思いながらも、顔には笑みを貼り付けて(仕事で見に付けたスキルだ)適当に返答する。 「…あぁちょっと忙しくて」 「そうなんだー。これからは顔出してよねー?」 「時間が合えば出来る限り、ね…」 「それじゃ」と会話を打ち切って(香水の臭いに耐えられなくなった。どれだけ付ければあんなになるんだろう)会場の奥へと足を進める。 彼女は名残惜しそうな顔をしていたけれど、違う人を見つけたようでそちらの方に駆け寄る足音が聴こえた。 ふぅと一息ついて、周りを見回すも仲の良い友人の顔は見当たらず、途中テーブルに置いてある飲み物を手に取り人のあまり居ないテラスに向かう。 窓に近い壁に寄りかかりながら、なんでここに来ちゃったんだろと思った。 友人の顔は見えないし、連絡が取れなくて逢いたいという人も特にいない。 …暇だ。帰ろうかな。そんな結論にたどり着いた瞬間、入り口付近で女性陣の黄色い声があがった。(関係ないが、何歳になっても女の子の威力って凄いと思う) 反射的にそっちを見れば、3人の男性らしき姿がある。多分、そのうち2人は山本武と獄寺隼人だろう。昔から人気あったし。私は山本派だったなぁ。 でも、残りの1人は誰? 山本と獄寺よりは背が低いようだけれど、それでも結構な高さがある。モデルですか、君たちは…。 周りに群がっている(横暴風紀委員長を思い出した)のが女性ばかりな所為か、それとも彼の身長が高い所為か、ちらちらと顔が見え隠れしている。 重力を無視したように逆立つ透き通りそうな茶色い髪。 この髪型で思い浮かぶクラスメイトは1人しかいない。けれど、彼はこんなに女子に人気があっただろうか。 「ねぇ!沢田くんってあんなに格好良かったっけ?」 「最近会わないうちに変わったよね!」 興奮気味に聴こえた会話。 ここで私は確信せざるを得なかった。やっぱり沢田なのか…。 人波の向こうに居る沢田を見て溜息をつきたくなる。巣立ちを見守る母親の心境だ。もしくはアレ、あら見ないうちに大きくなったわねぇ、おばさん若い子の成長についていけないわっていう感じ。 空になってしまったグラスを交換しにテーブルに近寄る。(あの人波に逆らって帰ろうなんて度胸は私にはない) 人の多さに四苦八苦しながら(ここだけやけに人口密度高い!)グラスを交換した私は再び元の位置に戻り、さっきと同じように会場内を眺めた。 気のせいだろうか。人波の中心に居た人物の1人がこっちに歩いてきている気がする。 うん。気のせいだ、気のせい。沢田が爽やか過ぎる笑顔でこっちに向ってきているはずがない。疲れてるんだよ、私。 有給とろうかな…なんて考えながらテラスに出る。 会場内に居たくなかった。女性陣の視線が痛すぎる。(刺さってた、絶対視線私に刺さってたよ!) 「!」 昔より低くなった沢田の声をシカトするわけにもいかず、ゆっくり振り返った。 そこに居たのは少し前まで人波の中心人物だった沢田綱吉。 私の知っている沢田とはかなり違くて、目を見開いた。 驚愕変身続く |