異常が正常に変わった日。










18.事件










「1ヶ月前・・・?何があったっていうんや」



忍足が固まっている青学メンバーを横目で見ながら言った。
けれど、その問いに答える奴は居ない。
答えたいけど口が開かない、そんな感じだ。・・・もちろん、リョーマは別だが。
は私を待っているようにチラチラとキッチンの方を見る。
扉の前で小さく溜息をついて片手に飲み物を持ち、私は扉を開けた。



「それを今から話すんだ」



静まり返った部屋に自分の声が響く。
私に集中する視線を軽く受け流しながら、それぞれの前にお茶の入ったコップを置いた。



「お茶でよかったか?」



この言葉が「飲め」という言葉になったかのように乾、以外の3人がお茶に口をつける。



「さて、早く話そう」
「あぁ・・・。1ヶ月前、ある事件が起こった。」



乾が眼鏡を上げ言った。
不思議にも誰一人として口を出そうとはせず、乾はそのまま話を続けた。



「・・・俺たちテニス部のマネージャーが何者かに突き落とされた。」



「突き落とされたってどういう事や?」
「どうもこうも、そのままの意味だ。」
「それはそうやろうけど・・・。なんでそれがちゃんたちに繋がるんや?」

「突き落としたのがの所為になったからな。」



がきっぱりと言う。
リョーマの反論が出そうになって私はそれを遮った。



「何もない普通の放課後だったんだ。・・・そんな日には突き落とされた」



「まぁ、きっと犯人は少し脅すつもりだったんだろう。」



私に続いて乾が説明を入れる。




「・・・犯人の誤算は3つ。まずは突き落とした場所だ。
 非常階段がいけなかった。あの階段は大分古くてね。
 手すりの部分が脆くなっていたんだ。そしてそこに突き落とした・・・。」



その後は言わなくても想像できた。



「手すりはの体重に耐えられなかった。」
「そして、そのままは落ちた」
「でも、幸いにそこは3階で命は落とさなかった。・・・つっても、まだは意識不明だけどな」



乾、私、が順番に話を続けていく。

この話は独りでするにはつらい。
乾にとってもにとっても、私にとっても・・・。



「そして、2つ目の誤算。思っていたよりも事件が大きくなってしまった事。」
「平穏だった青学に誰かが突き落とされたというニュースはすぐに広がってしまった」

「犯人は自分がやったという事のがばれるのが怖くて噂を流したの。
 “ を突き落としたのは仲の良い だ”とね・・・。」

「あの噂が回ったのは早かったよなー」
「そうね。・・・噂は回り、犯人の思惑通りに進んだ。」
「犯人はが真相を探している事を知った」
「んでー。俺も突き落とされた」



苦笑しながらが言う。
それでも周りの緊張感は取れなかった。



「・・・最後の誤算は」






「私たちを敵に回した事だ」







フッと隣で乾とのどちらかが笑った。


















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事件の内容。・・・大分大雑把だけど。