運命の出逢い。そんなもん…ありますよ!





01.ちょっとこれって運命じゃないの







春。暖かい空気の所為で眠くなる春。

春といえばクラス替え。
お花見とかもっと違うものがあるだろ、とかそんな突っ込みは私には通用しません。私にとっちゃ春イコールクラス替えなんです。
私の通ってる学校は『氷帝学園』
いわずと知れた、お坊ちゃま学校。めちゃくちゃセレブ校。ちなみに中等部ね。
私はよく知らないけど、テニス部が凄く有名で人気らしい。ファンクラブもあるって話だ。
テニス部の友達は居るけど、レギュラーではないんだよね。
さっきも言ったけど私は全然テニス部に興味がない。名前と顔が一致しないっていうね。別に死なないから良いじゃない、知らなくても!


ー!クラス一緒!」


掲示板に張られているクラス表も見ずにボーっとベンチに座り込んでいると、見てきたらしいがこっちに駆け寄ってきた。
この頃、と一緒のクラスになってなかったから、嬉しい。今年はいい年になりそう!
笑顔で「やったね」と答えたら、も笑ってくれた。うーん、癒し。


「それにね!テニス部向日くんも一緒のクラスなのよ!どうする、!」


ムカヒ。むかひ?



「……誰だっけ?」



ちょっと首を傾げて言えば、に鼻で笑われた。
「掲示板の方見てみなさいよ」と言われて梓の後ろを見ると、おそらくうちのクラスであろう女子がキャアキャアと黄色い声をあげて騒いでいて。
あとで聴いた話だけど、中には嬉しさのあまりに失神した女子も居たそうで。…んな、馬鹿な!
どうやら、ムカヒくんと同じクラスになれた事はとても凄い事らしい。


「ったく。凜は本当に、なんにも知らないのね!」
「だって、知らなくても生きていけるし。」
「はぁー…。ま、教室に行けばわかるでしょ」


その大きい溜息、聴いてるこっちが落ち込むんですけど!
は私の手を掴むと、引っ張って校舎の方に歩き出す。私は特に反攻もなく、それに従って歩いた。



…このとき、私は知らなかった。
教室に運命が待っているなんて!知ってたらもっと可愛い髪形とかしていったよ!






教室に入ろうと扉を開けた途端、私を包んだのは女子の黄色い叫びだった。



「きゃーーーっ!」



何?何々!私って女子にそんなに人気あんの!知らなかった!


慌てての方を見るも、は私の事なんか見てなくて、きゃっ、と短く叫んだ。
よかった。どうやら女子があげた叫び声の的は私じゃなさそうだ。
ホッと胸を撫で下ろして皆の視線の先を探る。
探るといっても、目的の人はすぐ後ろに立ってたので、見つけるのに苦労はしなかった。



そしてそこに居たのは…プリンスでした。



独特の髪型で、髪の色は日本人とかけ離れた赤色。赤なはずなのに、目が痛くなりそうな鮮やかさはない。
身長は160くらいで、私より小さい。私が大きいだけかもしれないけどさ!
顔は………大好きだ!

ズッキューンと胸に矢が…!


「俺の顔になんかついてるか?」
「っ!」


プリンスが私の顔を覗くようにして言った。私の方が背が大きい所為で、プリンスは上目遣いだ。クリーンヒットですけど!
叫ばれる事には慣れているのか平然とした顔で居たプリンスだけど、固まられる事には慣れていないようで困ったような顔をする。


運命ですか!これって運命ですか!?ねえ!あっちから話しかけてくれましたよ!運命ですよね!運命の出逢いです!


「?」


きょとんって…!やめてください!もうやめて!私のHPはもうゼロよ!
可愛すぎるんだ、魅力ゲージがどれだけ高いんだ!てか、君、本当に男の子!?


「いへ…なんにほつひてなひです…」


ろれつがまわらないで言い終わると、視界が白くぼやけた。
その途端に私の体は後ろに倒れていく。
倒れる瞬間にプリンスとの慌てる顔がちらりと目に映った。


あぁ。愛らしい…。


こんなに早く好きになったのなんて初めてだ。やっぱ、運命でしょう!




っ!」




薄くなる意識の中、プリンスが私の名前を呼んだ気がした。



今回の教訓
運命の出逢いは失神してしまう恐れがあるのでお気をつけください。








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お題連載第一弾。
氷帝で赤い髪といったら彼ですよね?

お題は0501様からお借りしました。