回想終了。
17.優しい人たち
入ってくるそよ風に眼を細める。
「・・・あの頃は神田の事嫌いだったなー・・」
「俺もだ」
「あ、やっぱり?でも神田は皆嫌いだったじゃん」
睨みつけるように見てくる神田に苦笑しながらアレンくんの髪を梳く。
アレンくんの顔にはまだ涙のあとが残っていた。
悲しませてごめんね・・・。
心の中で謝罪する。
その行動が神田の癇にさわってしまったらしく、後ろから抱きしめられた。
らしくない神田に驚きながら上目遣いで見る。
「・・・」
「神田?どうしたの?」
「・・・行くなよ」
「どこへ?」
「どこにも」
「行かないよ、どこにも」
今は。
いつかは旅立ってしまうけど、それまでは・・・。
「・・・神田、私、行くね」
さらに強く抱きしめてくる神田に優しく言う。
嫌だと意志を示すもの力を緩めてくれた。
このまま、アレンくんと2人にするのは怖い気もするけど、コムイさんのところに行かなくては。
私は優しい神田とアレンくんを見ないように振り向かずに走った。
+ + +
息切れしている息を整えてコムイさんの部屋の扉を叩く。
中から「どうぞ」という声がした。
「失礼します」と一言言って崩壊寸前のコムイさんの部屋に入る。
書類やなんやらを踏まないよう、慎重に歩いた。
リーバー班長とかが掃除してるはずなんだけどなぁ・・・。
1時間あまりでここまでにするコムイさんって・・・。
埋もれているソファをなんとか見つけて座るとリーバー班長が部屋に入ってきた。
肩にはアレンくんの連れていたゴーレムがのっている。
リーバー班長は入ってまず、またか・・・と溜息をついた。
苦労人とはこの人の事だ。
「コムイ室長、ティムキャンピーを連れてきました」
「あ、うん。ありがとう」
「それと、が来てます」
「あ、うん。ありが・・・えぇ!?」
「気づいてなかったんですか・・・」
コムイさんは入ってきた私に気がついていなかったらしく、驚きすぎて積んであった書類を倒してしまった。
あの・・・私、入ってくるときコムイさん返事したんだけど・・・
コホンと咳払いして苦笑しながらコムイさんが私を見た。
「来てくれてありがとう」
「いえ。で、今日はなんなんですか?」
「あれ。言ってなかったかい?」
「言われてないです」
なぜアレンくんのゴーレムを連れてきたのかわからなかった。
アレンくんに関係がある事なんだろうけど・・・。
「これからね、アレンくんの過去を見るんだ」
どこにあったのかコムイさんはコーヒーを飲んで言った。
リーバー班長がせっせと書類をまとめている。
「・・・過去ですか?」
「そう、過去。クロス元帥の行動とかも気になるしね」
にっこり笑って言われると「はい」としか答えようがなくなってしまう。
素早い行動で書類をまとめあげたリーバー班長が私の隣に座った。
早っ!
「お疲れ様です」と言うと「あぁ」と返ってきて苦笑する。
本当に大変そうだなー・・・。
「準備はいいかい?」
「はい」
人の過去を覗き見なんて良くないと思う。
けど、コムイさんの事だから何か理由があると信じたい。
私は覚悟を決めて答えた。
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