頑張ってね。










19.いってらっしゃい










「・・・さて、そろそろ時間だね。僕は行くけれど、くんはどうする?」



眼の赤みをひかせる為に濡れた布を当てているとコムイさんが立ち上がって言った。
私を気遣ってくれているのが伝わってきて笑みを浮かべる。



「もちろん、行きますよ。」



この言葉を聴いてコムイさんは笑い、扉を開けた。



向かうところは地下水路。










暗い地下水路に船が1隻停まっていた。
神田は「なんでこんな奴と・・・」とかなんとかブツブツ言っていて不機嫌そう。
そんな姿が神田らしくてクスリと見えないように笑った。



「これ着なきゃいけないんですか?」



アレンくんが自分用の団服を見ながら言う。



「エクソシストの証みたいなものでね」
「個人専用なの。着てみて」



コムイさんの後に続いて着るように言ってみるとアレンくんは素直に頷いて袖に腕を通し始めた。



可愛いなー。神田もこんなに素直だったらいいのになー。



「戦闘用に造ってあるからかなり丈夫だよ。あと左手の防具はボク的に改良してみました」



団服についての説明中にアレンくんの袖が動いて袖の方を見るとティムが出てきた。



「ティムキャンピー!どこ行ってたんだお前」
「ティムキャンピーには映像記録機能があってね。キミの過去を少し見せてもらったよ」



「だから徹夜しちゃったんだけどね」とコムイさんは笑う。
本当は私の所為なんだけど、アレンくんと神田には言えそうにないからちょっとコムイさんに感謝。






「アレンくん、神田」



船に乗り込もうとしている2人に声をかけた。
アレンくんは嬉しそうに、神田は不機嫌そうにこっちを向く。
私は赤い眼を見せないように微笑みながら2人を抱きしめた。
そして、2人の耳元で囁く。





「気をつけてね、ちゃんと帰ってきて、ホームに。・・・頑張って」





身体を離して船を出す。
船がゆっくりと離れていくのを見つめながら、「神のご加護を」と祈った。





「いってらっしゃい」





その場に居た人たちと手を振った。





「いってきます」





アレンくんがそう言うのを微かに聴きながら、涙を堪えて船が見えなくなるまで見送った。



もしかしたら、君たちが帰ってくるときにはもう居ないかもしれないから。
君たちが怪我もなく、ここに帰ってこれる事だけを祈ります。



頑張って、としか言う事ができないから。



















  



さよならアレン、神田!
君たちの出番は当分ない!(笑