胸騒ぎがした











02.左手











「石、入ってるんでしょ?」










テニスコートの方で聞き覚えのある声がした。







まさか・・・







胸騒ぎがしてテニスコートへと走り出した。






まさか・・・でもそうなのだろう。
琴音さんも今日からここに通うって言っていたし・・・










アイツがきた・・・!













部室近くの水道からテニスコートまで全力で走る。





「フォルト!!」





新入生らしき声がする。




フェンス越しにテニスコートを見れば、丁度リョーマがツイストサーブを打っているところだった。









「大丈夫?汗かいてるよ」









挑発的なリョーマの声。




あの頃から全く変わっていない。
あぁ、本当に帰ってきてしまったんだ。




何故かしみじみと思ってしまった。








その後、桃城が負けずと押し返そうとするが右手で打っているリョーマはそんな事微動だにしなかった。















「まだまだだね」













そう言って左手に持ち変える。







「やーめたっ」






桃城がここの雰囲気に合わないような陽気な声で試合をやめにした。






桃城らしい・・・
あいつ、リョーマが左利きな事わかったな。
リョーマも怪我をしている先輩だからって右手でやるなんていい性格してるよ。





フフッと笑いが零れた。












さぁ、こんな事しているわけにはいかない。
洗濯を再開しなければ。






学ランにに着替え家に帰ろうとしているリョーマを見、部室裏へと急いだ。











このまま、再会しなければ良いのだが・・・そういうわけにもいかない。
私はここのマネージャーだから、いつかは会ってしまうだろう。
そのとき、リョーマも周りの奴らと同じ眼をするのかと思うと胸が痛んだ。











でも・・・これでいいんだ。
敵視するならすればいい。
私の味方なんかにならない方が良いんだ。










彼らのように苦しい目には遭わせたくはないから・・・













  





リョーマ登場。

微妙に原作沿い。