話を聴かせてもらおうか?
13.参戦
「ったく何なんだよ、嫌な感じだぜ」
ムスッとした顔で私の格好をしているが呟く。
逆に私の表情はなくなっていた。
学校では、表情を出してはいけない。
そう、私の中であの事件があった後、誓った。
ここには敵が多すぎる。
「なんで何も言ってくれなかった?」
歩きながらに問いかけるとはニカッと笑いながらのん気に言った。
「だってを驚かせたかったんだもん!」
隣でニコニコ笑っているを見て溜息をつく。
・・・だもん、て。
というかコイツのこの性格を直してほしい。
「でもま、まさか机がなくなってるとは思わなかったなー・・・」
ポツリとが呟いた。
私は「の方は嫌われてるからね」と返す。
の方はそこまで嫌われていない。敵はレギュラーだけ。
だけどは違う。
最初はレギュラー陣だけだったが、今では学校中が敵だ。
先生でさえ味方だと信じる事が出来ない。
「でもって、なんで居るんだよ」
「退院したから。」
「いや、そうじゃなくって」
「そろそろ、俺もゲームに加わろうかな、と思ってさ。先生からも退院して良いって許可でたし」
「来る前に言え」
・・・まったく、コイツは。
そう思い、溜息を漏らす。
は何が面白いのかニコニコと笑っている。
「・・・何」
「学校、久々だなーってな」
「1ヶ月ぶりだからね」
「そっか・・・もう1ヶ月なんだよな」
「早かった?」
「早くはないけど・・・色々あったよな・・・」
が昔の事を思い出すように言った。
私は「そうだね」と俯きながら呟く。
1ヶ月。
まだたった1ヶ月しか経っていないのに、こんなにも、変わってしまった。
周りが、私が、全てが・・・こんなにも。
「そだ!リョーマ、見に行くか!」
暗い空気を吹き飛ばすようにが言う。
「嫌だ。せっかく、逢わないようにしてるのに自分から見つかるような真似はしたくない」
「そんな事言うなよー。見つかんなければいいんだろ?」
「・・・」
「よしっ、決まりな!」
「ちょっと待て」この言葉を言う前に私はに手をひかれ、走っていた。
リョーマが居る教室に向かって。
この選択は間違っていたのかもしれない。
1年生の教室は私たちの目指していた職員室に近い。
だから、リョーマも見れて、帰りに職員室に寄れる・・・一石二鳥だ、とは笑った。
私は手をひかれるまま、リョーマの居る教室に近づく。
「お、いたいた。」
の言葉に今まで伏せていた顔を上げる。
たくさんのクラスメイトの中に、リョーマが居た。
周りの子たちは楽しそうに話しているのにリョーマはどこかつまらなそうな顔をして話を聴いている。
「あいつらしい」とが優しく笑ったのを横目で見た。
クラスの中の光景が微笑ましくて私も自然と頬が緩んだ。
その一瞬だった。
「・・・っ!、行くぞ」
「は?」
「気づかれた」
早口で喋りながら、来た道を今度は私がの手をひっぱって走った。
気づかれてしまった。
リョーマにこの学校には私たちが居ると。
気づかれてはいけなかったのに・・・。
近くにあった学年室の扉が開いていたので迷う事なくその教室に飛び込む。
物音1つたてまいと息を潜めた。
それでも、学年室の扉は少し開け、外を見れるようにした。
数秒待つと誰かが走ってくる。
緑がかった黒髪。相手を射抜いてしまうような挑戦的な瞳。
その少年は消えぬくような声で
「、・・・?」
と呟いていた。
完全に気づかれてしまった。
リョーマは私たちを探すだろうか?
探すのならば、逃げなければならない、真実を掴むために。
リョーマを危険な目に合わせないように。
丁度良く、授業開始のチャイムが鳴った。
教室にいた教師が「越前、早く入れー」と言う。
リョーマは渋々、教室の中に入っていった。
「・・・ごめん」
「いいよ。のせいじゃない。いつかは会わなくちゃいけなかったんだ」
「でも・・・」
「らしくない!笑って?それから、次の事考えよう?」
「・・・ありがと」
は優しく微笑んだ。
私も微笑み返す。
起こってしまったものはしょうがない。
問題はこれからどうするかだ・・・。
またややこしくなりそうな現状に苦笑し、天井を見上げた。
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リョーマに気づかれた・・・!