どうして俺から逃げた・・・?
14.無知
今日は1日授業に集中できなかった。
少しだけ見えたとの事が頭から離れない。
「なんで逃げたりするんだよ・・・」
小さく呟く。
近くに居た堀尾が「越前!部活行こうぜ!」と俺の手をひいた。
俺はボーっとしたまま部活に向かう。
気がついたときにはもう部室で、テニスウェアに着替えだす。
堀尾たちは先に着替えて行ってしまったらしい。
別にいいけど。
「今日、が学校に来たんだって」
不二先輩が着替えながら言うと菊丸先輩が明らかに嫌そうな顔をした。
「げぇー。マジで?最悪」
菊丸先輩の言葉に不二先輩は頷く。
俺は2人がなぜそんな態度をとるのかがわからなかった。
でも今はそんな事より、の事をもっとよく聴きたかった。
「先輩、って」
すべて言えなかった。
言い終わる前に乾先輩に口を手で塞がれる。
「越前、どうかした?」と不二先輩に聞き返されると俺の代わりに乾先輩が「なんでもないよ」と答えた。
不二先輩は納得のいかない顔をしながらも菊丸先輩に急かされ、部室を出て行く。
部室に居るのは俺と乾先輩だけになった。
乾先輩は周りに誰も居ない事を確認して俺の口を塞いでいた手を外す。
「の事を訊こうとする事は感心しないな」
「・・・なんでっスか?」
「今、との置かれている状況は良くない」
「どういう事っスか?」
「部活に出ればわかるよ」
口元に悲しそうな笑みを浮かべて乾先輩は言った。
そして、ロッカーに入っていたノートを手に持ち、部室を出て行く。
「あぁ、そうだ、越前」
思い出したように乾先輩が言う。
「早くしないと手塚に走らされるよ」
俺はその声を聴いて急いで着替えた。
走らされるなんてごめんだ。
「それと、」
まだあるんスかと言った顔で乾先輩を見る。
「・・・は越前に関ってほしくないそうだ」
そう言い残して乾先輩は今度こそ部室を出て行った。
何も言わずにバタンと閉まった扉を見つめる。
これが差だと思い知らされた。
「なんでだよ・・・!」
心で呟くより先に口で呟いていた。
なんであの時逃げたんだよ
なんで俺に関らせたくないんだよ
なんで、なんで・・・!
今の俺にはわからない事だらけだ。
自分の無知さを悔やんだ。
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関らせたくないんだ。