なんか、この頃よく保健室来るなー…。 06.いっそ襲ってしまおうかさてさて、毎回進展がない私ですが、今回は期待しても良いんですよね? …そんな事で、只今保健室に居ます。 なんでかというと、岳人が倒れたから。 おっしーから聴いたときは心配で死ぬかと思った。いや、本当に。 だってあの岳人だよ?超がつくほど鈍感な岳人だよ?倒れるって…。怪我した事にも気づかなそうなのに! 体育の授業中だったから、先生の目を盗み保健室に直行して今ここに居るわけで。 「あら、さん」 「…先生!岳人は!?」 「向日くんならそこのベッドで寝てるわよ」 「具合、大丈夫なの?」 「大丈夫 大丈夫。…まったく。だからムーンサルトなんかやっちゃいけないって言ったのに!」 「ムーンサルト…?」 「あぁ。向日くんの必殺技よ。今日の体育はテニスだったでしょう?だから、調子にのって連続で跳んだらしいわ」 「…もしかして、それで落ちたの?」 「えぇ」 ……なんという脱力感。 ムーンサルト、連続でやって、しかも失敗とか格好悪っ!必殺技なんでしょ? なんか心配して損した感じ。折角、授業サボって来たのに! はぁ、安堵なのか呆れなのか、どっちつかずの溜息を漏らして岳人が寝ているベッドに近づく。 馬鹿な子の顔でも拝んでやろうじゃないか、と閉まっているカーテンと開けて、ベッドに座った。 「向日くんは幸せね。心配してくれる人が居て」 先生は優しく微笑んでから、用事があると保健室を出て行った。 その扉を少し見つめて岳人の顔に視線を移す。 「ったく、幸せそうに笑っちゃって」 大好きなバンジーの夢でも見ているんだろうか。 こっちまで微笑んでしまいそうなほど、岳人の顔は幸せそうで。 はっきり言っちゃえば可愛い。ぎゅーって抱きしめたくなるぐらい可愛い。 そよそよ、なんとも少女漫画チックのベタな風が保健室に入ってくる。 「…襲いたいな。襲っちゃおっか」 ニヤリと顔を歪ませて微笑む。 どうせ寝てるんだし、1回や2回わかんないでしょ! 少しずつ岳人の顔へ自分の顔を近づけて行く。 …どうしよう。ほんの冗談だったはずなのに(2%くらいは本気だったけど!)、体が止まらない。心と体が岳人という存在を欲してる。 好きすぎて何も考えられる気がしない。……って、なんか変態っぽくない!? ま、変態でもなんでも良いよ!こうなったら、度胸だ! 起きるわけがないんだし、襲っちゃえ! 少し顔を離して岳人の頭の横に手をつくと、スプリングがギシリと鳴いた。 ワォ。本当に襲ってるみたいだ。襲ってるんだけども! 再び顔をだんだんと近づけて行く。 「…お、ホンマにキスするみたいや」 「、頑張って!もうどっちが攻めだとかは気にしないからっ!」 「ちょ、静かにせいっ!気づかれるやろ?」 「…そうね、ごめん。あっ!あと1センチ!」 扉の方から聴こえてきた よーく知っている声たち。 はい、皆さんご存知のとおり、私の親友 と岳人の保護者 忍足 侑士です。 おい、お前ら何やってんだコラァ 「…お2人さん。覗きって楽しい?」 岳人から体を離し、にっこり笑って2人に言った。 「ちゃん、これはふかーいわけがあんねん!だから早まらんといて!!」 手をボキボキ鳴らし始めた私におっしーは慌てて言い訳する。 もうね、話が通っていようが通ってなかろうが、言い訳だから!容赦はしない! 「いつから居たんだ2人ともーっ!!」 「「スミマセンでしたー!!」」 いそいそと保健室を出て行った2人を笑顔で追いかける私の姿はとても恐ろしかったという。 とおっしーがいけないんだからね! 2人を追いかける事に夢中になっていた私は、誰も居なくなったあとの保健室に居る岳人の様子を知る由もなかった。 「…っ。なんだったんだよ」 静かになった保健室に真っ赤な顔をした岳人の声が響いた。…らしい。 うわーん!どれもこれも、皆おっしーの所為だーっ!おっしーの馬鹿!…は馬鹿じゃないです。スイマセン。だからそんなに微笑まないでください。 今回の教訓 好きな人を襲うのであれば、人気のないところで気づかれないようにしましょう。 Back Top Next ちょっとだけ真面目な予感。(あくまで予感 |