目の前が真っ白で何を言ったら良いのかわからない。





09.ホントにホントに好きなんだ







「…っ、!」


誰かが私を呼ぶ声が聴こえる。真っ白な視界の中、あぁ彼の声だ、と思った。
その声に導かれるように、私の瞼はゆっくりと開いていく。


「岳、人?」


瞼と同時に開いた口から零れた言葉に対して、岳人は「」と私の名前を呼んだ。



「…ごめん」



いきなり聴こえた謝罪に、寝ぼけた頭のまま驚いた。

なんで岳人が謝る必要があるの?悪いのは私。


「意味わかんない」
「は?」
「なんで岳人が謝るわけ?」
「…俺、お前に酷い事言ったから」


苦しそうに言う岳人が、無性にムカついた。


「馬鹿か、アンタは」


そんな顔しないでよ。

私の言葉が予想外だったのか、岳人は目を丸くして私を見た。
そして、一瞬の間のあと、「馬鹿じゃねぇ!」と必死の反論。いつも通りの反応に少し顔が緩むと、岳人も尾口端を上げた。
「ほら、掴まれよ」と差し出された手に甘えて、掴まり上半身を起こす。
1回、木に体を預けて、空を見、口を開ける。


「…ねぇ、岳人。私、岳人に言いたい事があるの」


夢の中での問いかけの答え。


「なんだよ。改まって。」


不気味なほどに真剣な私に岳人は顔を引きつらせた。
って、失礼だから!
気を取り直して、岳人を見つめる。



「私ね、岳人の事が」



ココロの中の私が問いかけた、答え。
あのときは、どうしても言えなかった答えが今ならきっと言える。
だって、もう自分の気持ちを偽る事が出来ないから。
前のように、冗談みたいに可笑しく言えるほど軽い気持ちじゃないってわかっちゃったから。

この気持ちから逃げたくない。
欲を言うならば、貴方に受け入れて欲しい。

貴方が笑顔ならばきっと私は、雨の日だって晴れに出来る。
それくらいの気持ちが胸から溢れてくる。


だって私



「好き…」



どうしようもないくらい、貴方の事が。


「…」


沈黙が私たちの間をすり抜ける。
なんだか、私の言葉が冗談に捉えられてるようで寂しい。



「ホントに、本当に、好きなんだよ…っ」



声と共に流れ出した涙が頬を濡らす。
それでも、消される事のない沈黙に、私は顔を覆った。








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残すところあと1話。
クライマックスですね。